洛菜庵

古都の郊外、四季折々の散歩道です

櫻守

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 数年前に初めて見たとき、「この樹は何度か見てみたい」と、思いました。縁あって、今期に再会したのです。
 この日、照蓮寺桜は少し葉が出始めていました。枝に残った花びらが、ダム湖から吹き上がる風に舞い上がって行きました。光輪寺桜は満開を少し過ぎたところです。御母衣ダムの上方に見えるに山は雪渓を保ったままでした。(2008年5月3日撮影、高山市荘川町で。岐阜県荘川村は2005年2月1日に、市町村合併により行政区が統合されました)


 荘川桜は、水上勉の小説「櫻守」のモデルになった桜樹です。その作中で、気に入った一節を…。
 ……二本の桜は、新しい枝を張って芽吹いた若葉のあいまからうす桃色の美しい花をのぞかせて、春風にゆれていた。この桜の根元には、時折弁当をひろげて夕方まで動かない老夫婦の姿があった。どこからきた人たちかわからなかったが、おそらく水没の村を出て都会で暮らしている人だろうということだった。朝早くにきて、一日じゅう桜の根にいて、うごかない一組はふたりとも七十に近かった。老夫婦は日の暮れるまで、そこにいて、日がかげりはじめると、桜の根に手をふれて泣いていたという。