洛菜庵

古都の郊外、四季折々の散歩道です

「トンコ」

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同僚が東京の古本市で買ったという「おみやげ」が、文庫本でした。
「トンコ」、ホラー小説大賞短編賞受賞作って帯に書いてあります。日ごろ滅多に読まないジャンルなので、しばらく置いたままでした。表紙の豚の挿絵にメルヘンっぽい雰囲気も漂います。
受賞した短編は、生後6カ月のメス豚のお話です。

他に2編が収録されていて、そのひとつ「黙契」の心理描写に感心しました。
赤貧のなかで兄妹の心理を、まるで体験したかのように描いておられる。「火垂るの墓」を彷彿させる手法。計らずも涙が出てしまいました。
ホラーというよりも純文学に近いじゃないの? 心霊現象よりも孤独のほうが怖いって。


作者を調べると、もう一つ本を出しておられる。「あちん」-幽・怪談文学賞短編部門受賞。
これもまたマニアックなジャンルで (^^;;

おみやげの文庫本は他人に回したので、手元に一つ残したい思いから書店で取り寄せてもらいました。注文した本が届いた日に作者のブログを見つけました。見ると、福井県の日イベントとしてシンポジウムがあり、この作者がパネリストの一人として出るらしい。特に用事がない週末だったので、京都からサンダーバードで福井まで、80分。受賞作を読みながら。

列車が北陸トンネルにさしかかったとき、ちょうど受賞作を読んでいました。物語の佳境の場所は、ひょっとしてこのトンネル? ぴったり合ってしまいました。
おおっ! これは偶然か、彷徨う霊気か…


で、会場へ。
せっかくなのでミーハーになりきって、終了後にサインをもらいました。
余談ですが、作者の雀野日名子さんは京都弁でいう「べっぴんさん」です。ちなみにサインの字は崩さないで、しっかり読める字でした。雀の雛のイラストを添えて。←これがかわいい

この単行本に収められている短編のなかでは「迷走」がよかった。大衆受けしない材料だけど、心に沁み入りました。



物語の舞台を覗きながら街歩きを楽しんだ一日でした。
二月というのに、雪もなく…