洛菜庵

古都の郊外、四季折々の散歩道です

菜の花

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 司馬遼太郎の没年は1996年ですから、21世紀の様子は知らないで亡くなりました。
 生前、小学6年生の国語の教科書のために書いた「21世紀に生きる君たちへ」は、原稿用紙10枚ほどの名文です。分かりやすい文章で司馬の想いが語られています。

 「私は、歴史小説を書いてきた。もともと歴史が好きなのである。…」で始まります。
 現代文明の危うさに触れて「…21世紀にあっては、科学と技術がもっと発達するだろう。科学・技術が、こう水のように人間をのみこんでしまってはならない。川の水を正しく流すように、君たちのしっかりした自己が、科学と技術を支配し、よい方向へ持っていってほしい…」と、やさしく告げています。

 司馬遼太郎の命日は2月12日です。司馬が好きだった菜の花にちなんで、毎年、菜の花忌が開かれるそうです。自宅はいま、記念館として公開されています。近鉄八戸ノ里駅から歩いて数分です。

 写真は、冬の日差しの中で、書斎に続くサンルームです。楠、椎、櫟などが植えられている雑木林の庭を通ると、日当たりのよい書斎が、生前のまま保存されています。ひかえめな巨匠が、菜の花を眺めてくつろいでいるような、おだやかな気持ちになりました。