洛菜庵

古都の郊外、四季折々の散歩道です

浄土谷の大日さん

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 その石仏は竹林の中の岩陰にひっそりと、東を向いて祀られていました。胸の前にあげた左拳の人差し指をのばし右の拳をもって握っています。智拳印です。密教では全ての仏は大日如来の徳の顕れとされています。


 天王山の西方向にある浄土谷の山中に大日如来像が祀られています。ずいぶん前に聞いた話です。ある人が病気回復後に、わざわざ探しあててお参りして、やっと、気が休まったと。
 探しあててまでお参りする石仏を見てみたい。そのとき好奇心からぼんやり思っていたことでした。

 紅葉にはまだ早く、浄土谷の集落付近は週末の昼にもかかわらず閑散としています。だいたいの場所を聞いていたのですが、クモの巣を掃いながら小一時間さがしても見つからず、また元の場所へ戻りました。折りよく集落の人が山仕事から帰ってこられました。大日像のことを聞くと、ていねいに教えてくださいました。後に「きのうも大日さんを訪ねてきた人がいましたで」と、付け足されました。そんな人もいるのですね。

 お参りしてから広い道へ下りたとき、孫をつれて弁当を食べている年配の人に会いました。「何か探されていたのですか」と聞かれて話しているうちに、その人はわたしの祖母の遠い親戚になることがわかりました。数十年も昔のエピソードを話していただけました。大日さんのお土産だったのでしょうか。奇遇です。